最近の新聞記事やテレビのニュースには、心を傷めるニュースが多く載っております。特に十五〜十七歳の若者の犯罪が目立ち、犯罪の若年化がみられます。戦後半世紀、どうしてこのような殺伐とした事件が起きるのでしょうか。

 現代の若者たちにも責任はありますが、大人にも責任はあるのではないでしょうか。「末は博士か大臣か」と若者たちが将来に夢を託し、希望を持って勉学に励んだ時代がありました。しかし、若者たちの夢である博士、科学者も政治家、いや政治屋も、金銭物欲にまみれている現状です。

 若者たちは何を目標に、どんな夢をもって生きたら良いのでしょうか。若者たちの手本となり、模範となるべき大人たちは、今まで何をしていたのでしょうか。連日報道される大人たちの金銭物欲のための醜い争いは、若者たちの夢を無残にも壊しています。

 なぜ、このような時代になってしまったのでしょうか。

 第二次世界大戦の敗北による精神的ダメージと貧困、その後、朝鮮動乱による精神的貧困のままの経済復興による物欲の充足という不均衡な社会状態が発生しました。経済的安定のもとで大家族制度が崩壊し、核家族化が進み、経済優先のための共働きの家庭が増えてきました。

 すなわち、家庭内教育失格の両親による子供への不毛の教育が始まったわけです。その結果、個人主張が強調され、他人への思いやりの欠如した子供たちが成長してきたわけです。受験戦争や詰め込み教育が、子供の心をゆがめ、校内暴力やいじめの原因と考えた文部科学省は、「個性尊重」をうたう「ゆとり教育」に転換指導しました。しかし、その狙いとは裏腹に、現在の学校現場では学力低下が指摘される一方で、子供たちをめぐる問題は複雑になっており、「学級崩壊」や「不登校」、「少年犯罪」の増加につながっています。

 また、女性の社会進出による家庭での母子相互関係の悪化も原因の一つに考えられます。子供に愛情を感じないばかりか、自分の子供を虐待する母親も出現し、「児童虐待防止法」という法律までできています。母親による家庭内教育など、ほど遠いように思われます。   

 今日のこの状態は、いろいろな原因があり、また、それらが重なってのことと思えますが、今こそ、国民全員がいっしょに母と子の絆を深める「教育」について考え、新しい日本再生のために努力すべきでしょう。 今、国民全員が新しく振り出しにもどったつもりで、経済面中心でなく精神面の充実した「心豊かな人生」を子供たちが送れるよう「教育」を見直してほしいものです。特に、子供の親たる者は今一度、自分自身を見直す教育をすべきであり、子供といっしょに家庭、親子の絆について勉強しなおすことも必要でしょう。

 私も二十年後の日本が良くなるように微力ながら妊婦教育に力を注いでいます。出産前からの両親教育、胎児教育、育児教育に情熱を燃やし、生まれてくる子供たちが、きっと新しい日本を再生してくれるものと期待して、毎日の仕事に励んでいます。特に「出産」では、家族の新しいメンバーを迎えるわけですから、「出産」を素晴らしい感動の場にするために、「ソフロロジー法」という出産方法を勧めております。

 「生めよ増やせよ」の時代から、現代の少子化時代へと変化したように、出産に対する考え方も大きく変化しています。出産の痛みから逃れるために、薬物による無痛分娩、和痛分娩の方法が取り入れられ、薬が効きすぎて「スリーピング・ベビー」が生まれた時代もありました。現在、出産時の痛みを乗り越える方法として、「ラマーズ法」が定着しています。「ラマーズ法」とは、出産時の痛みに対して呼吸法や弛緩法で、意識をできるだけはっきりと保ち、痛みに打ち勝つという方法です。

 しかし、最近では、母児相互関係を良くし、子供の非行化をなくすために、妊娠中より児に対する愛情を持って出産を迎え、出産時の痛みを自然のままに受け入れ、それを乗り越え、心のこもった出産、育児が大切という認識に変わってきています。

 そこで出産時の痛みを乗り越えるだけの「ラマーズ法」に代わって「ソフロロジー法」が注目を浴びてきています。インドのヨガや、日本の禅に源流を発し、すべてをあるがままに受け入れる東洋的発想に、西洋的リラックス法が結び付けられ、フランスで誕生した出産方法です。

 「ソフロロジー法」は、出産時の痛みを逃すのではなく、痛みを超越する方法で、苦しみを喜びにかえる処方箋のようなものです。出産時のみならず、妊娠中、出産後、育児にまで応用できる幅広い方法です。

 出産時の経験が、その後の人生で様々な困難に遭遇した場合、母親としての自覚に満ちて、それを乗り切る貴重な経験として生かされるはずです。これにより、母児相互関係がきっと良くなるものと信じています。




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