「おだやかな放課後」

「お、ルカワ発見」
 桜木はそう言うと、ブンブンと手を振ってみせた。
「ちょうどいいところに来た。ちょっと手伝え」

 文化祭の準備でにぎわう校内。
 流川は無視して通り過ぎようかとも思ったが、首から下がる白い三角巾に足を止めた。

「これをな、あそこに貼っ付けていくんだ。できるだろ」
 そう言って、色付きティッシュで作られた、高校男児には似つかわしくない花を渡される。
「オレはちょっと背中が痛ぇ」
 だから、休憩するのだそうだ。

 椅子かなんか持ってきてやればいいのに、と流川は思ったが、残り少ない花の数に、しぶしぶとため息をついた。

「……どうやって付けるんだ」
「セロテープでこうやって輪っか作って、ここにこう貼っ付けて、あそこにペタってすりゃぁ付く」
 やったことねぇのか? と呆れ顔だ。



 花を等間隔に貼り付けながら、流川は聞いた。

「……腕、どうかしたのか」
 昨日は確か、なんともなかったはずだ。

「うで? ――ああ、これか? 何でもねぇよ」
 笑って桜木は、それを首から外した。
「いちいちしゃがむのめんどくせーから、ここに花のっけてたんだ」


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「紛らわしい格好してんじゃねー、どあほう」

「何だ、心配してくれたんか。どうりで大人しく言うこときくと思った」

2002/09


きまぐれにはなるはな