「景色」

 ばーちゃんの家は北海道の、ちょっと寂れたところにある。
 最近はめっきり、盆と正月ぐらいしか遊びに行くことはなくなったけど、
 小さい頃はGW中も、両親と一緒に訪れていたことを覚えている。

 北海道の景色ってのは、内地とは比べものにならないくらいスケールがでっかくて、
 緑色、や、白色、っつっても、単一ではないことが見て取れる。
 濃淡や明暗、陰影ひとつとっても微妙な違いで様々で、
 そんな色鮮やかな一面が、オレはむかしから変わらず大好きだ。

 あいつには、どう見えるかな。
 窓に映る自分の影をぼんやり眺めながら、その奥のきれいな闇を見つめる。
 木々や草原は、緑一色にしか見えないのだろうか。
 雪の色は、水色ではなく白にしか見えないのだろうか。
 鮮やかな、一つ一つの花の色や、抜けるような空の色。

 一度見せてやりたいと思いながらそう呟くと、ばーちゃんに「好きな子のことでも考えているのかい」と聞かれた。
 虚をつかれて、ぼっと顔から火がふいた。
 そんな態度で振り返ったら、呆れたのか、ばーちゃんは素知らぬ振りだ。
「まーなっ」
 脈打つ心臓と同じくらい強く肯定して、ふいと、窓の外に顔を戻すと、照れた自分と対面する。
 ばーちゃんは、やれやれと誰かを彷彿させながら、「今度連れといで」と言った。

 そうだな。それもいいかもしれない。
 あいつに、ルカワに見せてやろう、この景色を。
 オレの大好きなこの景色を、今度はルカワと一緒に見よう。
 ついて来るかは分からないけれど、無理矢理にでも連れてくるんだ。
 今度じゃなくても、いつか必ず。

2002/06


きまぐれにはなるはな