「自問自答」

 考え事をするなんて、今まではなかったことだ。
 なのに気が付けば、あいつのことばかり考えている。

 いつからだったか覚えてねーけど、桜木が奇妙な目でオレを見るようになった。
 いつもって訳じゃねー。時々だ。時々ふと、変な目をする。
 たとえば、屋上で。たまに廊下で。あるいは、部活の合間に。

 ぼーっとするように、じぃっと見詰めるように、いつもの強い意志ってのがまるで感じられない、
 ただ「見ている」視線と、たまにぶつかる。
 時には慌てて、何もなかったかのように桜木は目を逸らすけれど、大抵はオレがそれに気付く気配を察して、合わないようにしているらしい。


 あの目を、オレは知っている。


 あの目で、桜木のことを見る女が増えたことを、知っている。
 あいつはどあほうだから、それには気付いてねーみてーだけど。

 気付いたらどうするのだろうとオレは考えて、気分が悪くなった。
 てめーはいつまで、そうしている気だ?
 オレはいつまで、こうしている気なんだろう。

2002/04


きまぐれにはなるはな