取りあえずの、愛の歌。―by Seawaterさまvv

「ぬぅ…。」

 それは、本当に偶然だった。
 たまたま立ち寄った東●ハンズで、たまたま見かけた、回転式商品陳列棚。
 なんだろう? と思って、近づいたのが運のツキ。

「ぬぅ…。」

 たくさん飾ってある、その中から、たったひとつ。
 ソレを見つけてしまって、それ以来。
 デカい背中を小さく丸めて、桜木花道は、えんえんと悩んでいた。

「ぬぅ…。」

 その異様な光景に、他のお客さんはかなり引いている。
 遠巻きに見つつ、けれど、関わらないようにと足早に過ぎていく。

「ぬぅ…。」

 ソレを手にとっては戻し。戻しては、手に取る。
 ずっと、繰り返し。

「よし!」

 何度目かで。
 ようやく決意したらしい、結局手にとって、レジへと向かった。









「ただいまー。」

「おぅ…。」

 我が家に帰りついた花道に。
 部屋の奥から、声がかかる。
 途端に、別段何をしたわけでもないのに、ドキリ★と胸が弾む。

『…いい加減慣れろ、俺!!』

 自分自身に言い聞かせ、のそりと居間へと足を踏み入れると。
 蜜柑を食べ食べ、テレビを見ている流川がいて。
 花道は、その目の前に、件のブツを無造作に置いた。

「…やる。」

 その一言とともに。

「? …なんだ、コレ。」

「開けて見ればいー。」

 コォトを脱ぎつつ、けれど花道は言う。
 素っ気無い風を装ってはいるが、気になって仕方ないのはバレバレだ。

「…。」

 無言で、ソレを開けた流川は、ちょっと呆然。

「…なんだ、コレ…。」

 それだけ言うのが、精一杯。

「いや…誕生日、何もやらなかったから、と思って。」

「そんなん、別にどーだっていー。なんで、コレなんだ?」

「…なんとなく…。たまたま、見かけたから。」

 それへ、流川は僅かに顔をしかめると。

「…いらねー。」

 ポイッ

 後ろへ放ってしまう。

「わ、なにすんだ!!」

 慌てて、花道はソレをキャッチする。
 そんな花道を冷ややかに見つめると、流川は。

「…どーしてもっていうなら…おめーの声がいい。」

「へ?」

「どこの誰とも知らねーヤツに言われるより、おめーの声がいい。」

 まじまじと見つめる花道から。
 ふいっと目線をテレビへと戻す。
 その横顔は、もしかしたら紅いかも知れない。
 そして、花道がカリカリと頭を掻いて。

「マジ、俺のんでいいんか?」

 と聞けば。

「…音痴でなかったら聞ーてやる。」

 憎まれ口。
 フッと笑うと、花道は。

「誰に向かって言ってんだ!?」

 言いつつ、手に持ったソレを、部屋の隅へと放りやった。





 西日を浴びて、キラリと光った、ソレは。

 --------------- Happy Birthday,かえでちゃん。

 と書かれた、CDでした♪

Written by Seawater 3rd.February.2002


ギャ→!!
か〜な〜り〜時期外れなブツでゴメン★
でもね、ホントにあるんですよ、『Happy Birthday Song』の、かえでちゃん版。
「くん」ぢゃなくてさ…「ちゃん」ってトコがポイント高いと思わないか?(爆)
=騰田の感想=
いやー、初々しい二人ですね(笑)
誕生日を祝い損ねたところを見ると、高校一年の冬でしょうか。
コートを着ている花道が新鮮。拗ねたり照れたりしている流川なぞ、花しか見ることが出来ないだろうに、こうして無粋にも垣間見させて頂けるなんて(むふっ)
しかし……なにゆえ『かえでちゃん』?? そうそうある名前でもなかろうに(爆)
新快の暗〜いSSを書いたお返しに頂いたものです。なのにこんなラブラブなお話を下さって……ううっ。
ちなみに、しぃ様のサイトには私めのブツもUPされておりますので、よろしければ(笑)
きまぐれにはなるはな